大腸菌ファージQβをモデルウィルスとして用い、土壌へのウィルス吸着実験を行った。関東ロームと思われる赤土を直径8mmのガラス製カラムに充填し、大腸菌ファージQβを所定の濃度(10^3〜10^7PFU/mlのオーダー)となるように加えたリン酸緩衝液をカラム上部から通過させ、カラム流過前後の液中ファージ濃度および土壌吸着ファージ数を定量した。 土壌単位重量当りのファージQβ吸着量は流下液中ファージ濃度にほぼ比例して増加する傾向を示し、流下Qβ濃度10^7PFU/mlに対して吸着Qβ数は約10^8PFU/g土壌であった。また土壌への吸着量はファージQβ溶液の土壌通過総量にも依存することが示され、通過量が増える程、吸着量も増加することがわかった。 同種の土壌を用いて流水-底質系における土壌へのウィルス吸着実験を行った。長さ約2m、巾約5cmの開水路の底部に土壌を約5cm敷きつめた。表流水はポンプで循環させ、開水路上部は蓋をかぶせ、閉鎖系となるようにした。循環流量および表面流の水深、水路の勾配は調節が可能であり、系の水理学的条件は自由に制御が可能であるようにした。大腸菌ファージQβを含む溶液を水路に注入し、表面流中のファージ濃度、および底泥中のファージ吸着量の深さ方向の分布を4日後まで追跡した。表面流中の遊離ファージ濃度は実験期間中ほぼ安定していた。底泥中のファージ吸着量は底質表面付近で大きい値を示し、深くなると減少する傾向を示し、実験期間中その値に大きな変化はみられなかった。吸着量の値は深さ方向にかかわらずカラム実験で得た値より小さく、流水より底質への物質輸送が律速となっている可能性が示された。
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