研究概要 |
し尿処理水(し尿を高負荷活性汚泥法とUF膜ろ過法により処理したもの)とpーニトロフェノ-ルの競合吸着実験を回分式実験により行って,pーニトロフェノ-ルの吸着等温線に及ぼすバックグラウンド有機物(し尿処理水中に存在する有機物郡)の影響について検討した。その結果,pーニトロフェノ-ルの単成分系での吸着等温線に比べて,し尿処理水中でのpーニトロフェノ-ルの吸着等温線は吸着量が低下することが示された。また,し尿処理水由来の有機物(紫外部吸光度UVあるいは全有機炭素量TOCとして測定)の吸着等温線も同様にpーニトロフェノ-ルの共存により吸着量が低下することが示された。微量有機物としてのpーニトロフェノ-ルとバックグラウンド有機物としてのし尿処理水中のTOCやUVの吸着の強さを比較すると,同一の活性炭添加量に対する除去率は常にpーニトロフェノ-ルの方が高いことが示された。このことはバックグラウンド有機物を構成する様々な有機物の吸着性に比べてpーニトロフェノ-ルの吸着性が高いことを示している。 昨年度までの段階で提案した競合吸着モデルとの適合性を本実験結果について検討したところ,モデルの検証に必要な広い濃度範囲(特に低濃度)のpーニトロフェノ-ルの吸着量/濃度比の算定誤差が大きく,モデルとの適合性を十分に確証するに致っていない。ただし,IAS理論に基づくシミュレ-ション結果からも,特に吸着性の高い成分の場合には競合相手のバックグラウンド有機物がわずかしか除去されない段階の活性炭添加量でも当の微量成分が定量下限以下の低濃度にまで除去されてしまうため,提案したモデルの検証が困難となることを予測している。したがって,本研究で提案した競合吸着モデルが適用され得る条件として,バックグラウンド有機物と同程度あるいはそれ以下の吸着性を有する微量成分に限定されることも明らかとなった。
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