吸着性の異なる様々な有機成分からなる原水を想定して、IAS理論に基づいて回分吸着平衡のシミュレ-ションを行い、全有機物量の吸着等温線について検討した。その結果、全有機物量の回分吸着等温線とカラム吸着等温線は本質的に異なり、また回分吸着等温線も原水初期濃度に大きく左右されて変化することから、従来便宜的に行われがちな多成分系有機物群を擬似的な単成分にみたてることは原理的に不可能であることを明らかにした。しかし、希釈や濃縮により原水の初期濃度が変化した場合の回分吸着等線の変化を予測する簡単なモデルを誘導し、自然水中の典型的なバックグラウンド有機物であるフミン酸水溶液の回分式活性炭吸着実験を行って、全有機炭素や紫外部吸光度を水質指標とする吸着等温線についてこのモデルがほぼ成立することを実証した。 さらに、IAS理論に基づくシミュレ-ションから、個々の成分の固液分配係数(平衡吸着量/平衡濃度比)は全有機物吸着量の関数としてあらわすことができることを明らかにした。これに基づいて、バックグラウンド有機物の吸着量が微量有機成分の吸着平衡に及ぼす影響を予測する簡易モデルを提案した。汚濁のすすんだ都市河川を水源とする浄水場のろ過池流出水に微量のpーアミノ安息香酸を添加した原水を用いて活性炭吸着実験を行い、紫外部吸光度を水質指標とするバックグラウンド有機物の吸着量がpーアミノ安息香酸の吸着等温線に及ぼす影響について検討した結果、この簡易モデルがほぼ成立することが実証された。
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