本研究の基本的な目的は水中の有機物についてその化学構造情報をもとにその水処理の難易性を推定することである。本年度に取り上げた処理特性はオゾンによる分解速度、活性炭吸着量である。 有機物構造特性としては分子構造のみからパソコン程度の計算労力で算出でき、かつできるだけその物理化学的意義が明確なものとの観点から、電子エネルギー準位、各種反応性指数と言った量子化学の分野で比較的よく知られている指標、また、分子連結度、分子表面積、分子体積等の概念把握が容易なものを選定した。 分子の電子的特性はMNDO法、AMI法等の半経験的分子軌道法により算出した。また分子の幾何的特性は、前者の手法により算出された最適構造座標値を使用して算出した。 オゾンの水中有機物に対する反応速度としてはHoiguneらの報告値を中心にD反応が主体となると考えられる条件化のものを収集した。これらの値と分子の諸特性、特にフロンティア軌道のエネルギー準位とは強い相関性を示し特にHOMOエネルギー準位とは相関係数0.87(データ数9.5)となった。しかるにこの関係をより精密なGP式等で検討しても改善される傾向は見られなかった。 活性炭吸着特性としてはDobbsらが収集した実験値を中心にさらに幾つかのものを付け加えデータスクリーニングを行ったものを使用した。フロインドリッヒ式の定数を吸着性を示す一つの指標とした時、この値は分子表面積と高い相関を示した。特に炭素、塩素の露出面積の効果が大きく、水素の効果はほとんど見られなかった。
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