蓮層耐震壁を含む鉄筋コンクリート(RC)造の中層建物例として8階建物の解析対象モデルを設定した。解析モデルの数値の設定にあたっては、設計図書等の資料に基づき、実建物の断面を参照して定めた。 開発を進めてきた架構を構成する柱・壁・はりの各部材の弾塑性特性に基づき骨組架構の弾塑性状態を定めて解析を行う手法(電算プログラム)を用いて、主として次の2点を本年度は採り上げ、状態変数をパラメータとして設定し、モデル建物の弾塑性地震応答解析を行った。 第1点として、RC造建築物の終局時降伏形として望ましい"はり降伏"先行の機構が形成される場合の、連層に設けられた耐震壁に取り付くはり(境界梁)の強度分布が骨組架構の変形(層間変形)分布に及ぼす影響を解析した。本解析より、上層部に取り付くはり部材強度を大きく採ると、壁頂部が拘束されることにより、骨組架構全体の変形が抑制されるものの、その抑制量は全体変形の数%程であり、降伏ヒンジが形成される境界梁の強度和が一定であれば、剛性・強度ともはり・柱に比して大きな耐震壁が芯棒とした架構全体の変形を規約し、壁体のモードに一致するよう変形を制御する特性を有することが明らかにされた。 第2点としては、耐震壁を含む有壁フレーム架構と柱・はりから構成されるフレーム架構を連成させ、連成組合せをパラメータとする解析を行った。全体骨組架構中にしめる壁の剛性と強度が全体変形におよぼす影響を数値的に対比し、骨組架構を連層壁の変形モードに規約するに必要な壁の剛性と強度の組合せを検討した。本年度の解析では、壁下基礎の拘束条件をピン支持とした場合について行った。 さらには、研究を進めるに当って、解析プログラムに修正を加え、解析の精度向上を図った。得られた成果の概要については、これを日本建築学会の研究発表会において発表し、ひろく成果の公表を行った。
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