本年度は、人工知能を応用した建築構造物の最適耐震計画を行うためのエキスパートシステムのプロトタイムの構築を行った。まず、最適化を行うための階層モデルの設定を行い、これを用いてシステムの構築を行った。システムは、数値計算を行う部分(C、BASICを用いて構築)と推論を行う部分(PROLOGを用いて構築)からなり、32ビットマイクロコンピュータ上で作動する。対称としては、一般的な中低層鉄筋コンクリート建物を設定し、構造要素として、耐震壁、長柱を考慮した。本システムでは、与えられた構造物について、ユーザーにより設定された環境パラメータの基で、まず1設計変数についての最適化を行う事が可能であり、複数の設計変数についても最適化が行える様システムの拡張を行った。本システムの推論部分は、知識ベース部分と推論・最適化を行う推論エンジン部分で構成され、前者はフレーム形式で、後者はプロダクションルールを用いて表現されている。なお、知識ベースの作成については、人間の主観性を考慮する為に、ファジィ集合理論と言語表現を用いて行い、これにより、種々のあいまい性を考慮する事が可能となっている。さらに、最適化推論もこの言語表現を用いて行っている。なお、最適化に必要となる建築構造物の応答性状については、先に述べた数値計算を行う部分で別途計算しておくものとし、その結果のみを推論部分へ受けわたしている。次年度以降で、数値計算部分と推論部分との結合を考え、より一般的なシステムの構築をめざす。本年度構築したシステムにより、最適耐震構造計画を行うエキスパートシステムの作成に関する知識ベース、推論エンジン構築に関する基本的知識や方法論が得られた。
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