1.鋼管で被覆された根巻き柱脚の性能確認試験を行った。この構法は、根巻き部を鋼管で被覆し併せて肋筋の省略を可能としたもので、優れた施工性と力学的性能を有する。本年度は、一連の研究の最終年度として、未解明部分を対象に補足実験を行うとともに、要求性能を満たし得る構成要素の下限値の把握と、設計式を提案することを目的とした。 2.試験体の総数は8体で、その鋼管柱は全て□-150×150×12、根巻き部のコンクリ-ト強度はFc=450kg/cm^2とした。実験変数は、被覆鋼管の断面(□-300×300×9、□-350×350×9、□-400×400×9)および主筋径(4-D19、4-D22、4-D25、4-D32、8-D19)である。載荷は試験体柱頭の正負交番水平載荷である。 3.本年度の実験では、根巻き部断面および主筋径が大きくなるほど、剛性・耐力は高い値を示した。しかし、極端に根巻き幅が広く根巻きせいの低い試験体では主筋の降伏後耐力劣化が観察され、また、主筋径の太いものでは、付着性能の劣化に伴う剛性劣化が観察された。 4.本年度までの過去5年にわたる実験結果を検討したところ、終局限界状態での応力伝達機構を把握することができた。この機構に、主筋降伏、主筋の定着・付着破壊、被覆鋼管の支圧降伏で決定づけられた耐力(実験結果)を適用し、耐力決定式が誘導された。 5.同じく、使用限界と思われる状態での応力伝達機構を明らかとし、剛性評価式の提案がなされた。 6.以上から、本講法の設計式が提案できたものと考えているが、被覆鋼管の板厚の下限値は、その影響が多方面に及ぶことから、把握しきるには到らなかった。しかし、市販品の角形鋼管を用いるならば、この究明は不要と考えている。
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