研究期間の最終年度では、前年度において推進してきた変位法の立場からのシェル曲げ問題に対する境界要素法を具体的な問題(偏平球形シェル)に適用し以下のような研究成果を得た。 1.数値計算スキ-ム 基礎的な解析手法を例題に適用するために必要な計算スキ-ムをまず開発した。特に、問題の基本解テンソルを構成している0次の第2種ハンケル関数および0次の第2種変形ベッセル関数を含む積分の評価に重点をおいて検討を重ねた。この結果、特異積分になる場合には、上記の特殊関数の無限級数表現を利用して解析的な積分を実行し、発散積分の有限積分(pf積分)を定めた。特異積分にならない場合には、数値積分公式による数値実験をもとに精度の高い数値積分公式を採用することにした。 2.境界条件 今回本研究で提案した“変位法"による立場では、これまで提案してきた応力関数法とは異なり任意の境界条件に適用できるものである。その適用性を検討するため各種境界条件を有する問題を解析することにした。先ずフ-リエ級数解の存在する単純支持の偏平球形シェルに対し良好な数値計算結果が得られた。なお、応力関数法では解析が困難である固定支持問題に対しても良好な結果が得られた。今後は既存の各種解との詳細な比較検討を進めてゆきたい。 3.荷重条件 本解析手法は、最も基本的な等分布荷重状態のみならず集中荷重状態に対しても適用可能である。そこでこれ迄取扱いが複雑であった集中荷重状態の問題に対し解析を進め、両荷重状態に対する力学的挙動の差異を明らかにした。
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