この研究は板状RC部材における群鉄筋の重ね継ぎ手に関して、継ぎ手率、継ぎ手重ね長さ、直交筋の内、外をパラメータとした実験を行い、部材の剛性、耐力または靱性を確保する為の要件を検討し、群鉄筋の重ね継ぎ手の設計上の問題点を探り、今後、実用サイズの鉄筋によるこの種の研究への手掛かりとするものである。実験は3シリーズよりなる。 1.群鉄筋継ぎ手曲げ挙動シリーズ D10及びD13を主筋とする一方向配筋のRCスラブ部材により、継ぎ手率を3/3、2/3、1/30/3、継ぎ手長さを15d〜30dの範囲で変化させ、更に直交筋が試験鉄筋の外側または内側に配される事の拘束効果の差異もパラメータとし、25体の曲げ試験を行い(σy〓3500kg/cm^2、Fc〓250kg/cm^2)、降伏荷重までの曲げ剛性及び降伏後の靱性に及ぼす継ぎ手重ね長さ及び継ぎ手率との関係及び継ぎ手で発揮される見掛けの付着強度に関して、定量的な成果が得られた。 2.継ぎ手の引張特性シリーズ 重ね長さをD10では15d、25dD13では20d、30dと変えてスラブの曲げ試験を行い(継ぎ手無しを含めて6体)、純重ね継ぎ手区間に注目して、重ね継ぎ手筋及び連続筋1本の引張り特性(みかけの応力-歪関係)を求め、これらを継ぎ手率に応じて組み合わせ用い、RC曲げ終局強度理論によって解析し、前シリーズの諸試験体の純曲げ区間のM-δ関係を良い精度で求める事ができた。 3.はねだし防止筋シリーズ 重ね継ぎ手の両端近くに、ヘアピン状のはねだし防止筋をかけ、その定着寸法、数量をパラメータに曲げ試験を行った(予備試験を含めて10体)。実験は進行中である。はねだし防止筋は、短い重ね継ぎ手の付着破壊は防げないが、重ね長さがある程度長い場合は、降伏後の靱性を高める効果が見られるようである。
|