高齢者向けサ-ビス付き住宅の居住者に対し、新たな居住環境へ転居することにより生じる問題について面接調査を実施し、問題を明らかにするとともにそれへの対処方法について下記の知見を得た。 1.高齢者向けサ-ビス付き住宅居住者に及ぼす転居の影響 前居住地からの転居範囲を交通手段別にみると、徒歩圏内が13.8%、乗継ぎなしの乗り物利用圏内が54.0%、乗継ぎありの乗り物利用圏内が31.0%である。前居住地とつながりのうち、特に「商店とのつながり」や「医療機関とのつながり」は、転居範囲の影響がみられ、徒歩圏内転居の場合にはやく半数がつながりを維持している。しかし、1年が経過すると「友人等とのつながり」や「商店とのつながり」が、弱くなる傾向がみられる。交通の便、買物の便、友人との往来に関する転居クレ-ムは、全体的にかなり高いが、徒歩圏内転居の場合には低くなっている。 2.高齢者向けサ-ビスつき住宅居住者の日常生活圏域の検討 転居による好ましくない影響を軽減するためには、徒歩圏内転居または良好な日常生活圏への転居が望ましい。今回の調査では、高齢者向けサ-ビス付き住宅居住者の日常生活圏域は、主に徒歩により形成され、一般的には500m圏である。しかし、対象者の半数にあたるやや下肢機能の低下した居住者の場合には、楽に歩ける範囲はさらに狭い。 3.転居に伴うストレスへの対処法 職員や居住者への面接を通じて、転居によるストレスの種類を探り、通常用いられる情動コントロ-ルや自己コントロ-ルなどの各種ストレス・マネジメント方法の有効性を検討した。
|