1.不連続面を有する円柱試験体を用いてかみ合った不連続面の基礎的透水実験を行なった。その結果は以下の通りである。(1)動水勾配が約10付近での層流から乱流への遷移、すき間幅が小さいときの遷移状況、拘束圧、間隙圧の透水性に及ぼす基本的特性を調べた。(2)不連続面の凹凸の平面的な分布をレーザー変位計を用いて非接触で計測して、モデル解析のデータとした。(3)かみ合った不連続面のすき間幅は約0.3mmであり、垂直応力による閉合モデルを作成し、実験結果とよく合致することを確認した。2.透水とせん断を同時に行なえるせん断容器を作製し、花崗岩の試験体を用いて実験を行い、この同時計測に成功した。その成果は以下の通りである。(1)試験体は120×100×80mmで、中央両側に深さ10mm、幅1mmのスリットを入れる。圧裂によって再現性の高い不連続面を作成する手順およびせん断中の不連続面のダイレタンシーを局部的に画像解析で計測する手順を確立した。(2)せん断中に放射流で透水させ、容器をオーバーフローした水量を電子天秤-パソコンのシステムで高精度に計測することによって広い範囲の透水性に対応できた。(3)せん断変位0の状態で垂直応力が20MPa程度になると、透水性が約2桁低下する。(4)垂直応力が約1MPa以下では、花崗岩は凹凸を乗り上げるダイレタンシーを生じて、せん断変位約0.1mmで最大値を示し、透水性も急増する。その後せん断変位の増加によっても透水性はあまり変化しない。(5)垂直応力が約20MPaでは、凹凸が切断されて、それによるダイレタンシーを生じる。透水性はせん断変位5mmまでの間で急激に増大する。せん断変位が20mmになると破砕粒子が粘土化され、透水性は極めて低下する。などの興味ある結果が得られた。(6)微小差圧計は、この実験中の試験体の入力側、出力側の正しい圧力を設定するのに使用し、実験精度を高めた。3.来年度は放射流透水試験結果の整理方法および透水モデルの作製を進める。
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