本研究は強磁性金属FeおよびCo中における種々の溶質拡散におよぼす磁気変態の影響と溶質原子磁気モ-メントとの関係を明らかにしようとするものである。Feのキュリ-温度近傍における置換型溶質原子の体拡散係数は10^<-15>〜10^<-16>m^2S^<-2>であるが、これらの値を従来の機械的セクショニング法によって測定する場合には転移拡散の影響を分離除去することは不可能である。このため、本研究においては高周波スパッタリングによるマイクロセクショニング法を用いて、体拡散係数を決定した。前年度に引き続きαFe中の置換型溶質原子^<51>Crの体拡散係数を広い温度範囲にわたって詳細に測定した結果、アレニウスプロットは常磁性領域においては直線的であり、強磁性領域における磁気変態の影響は純Feの自己拡散の場合よりも小さいことがわかった。更にαFe中の置換型溶質原子^<63>Niの体拡散係数を測定したところ、磁気変態の影響はCrの場合よりも弱い傾向にあることが示された。αFeの中の侵入型溶質原子CおよびNについての従来の拡散デ-タを詳細に検討した結果、これらの場合も磁気変態の影響があることが確認された。さらに、その程度は置換型溶質原子の拡散におけるものと同様に表式化することができ、しかもCおよびNの場合の磁気変態の影響はともにFeの自己拡散原子Cの拡散における磁気変態の影響がCoの自己拡散におけるものより大きいことと一致している。
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