研究概要 |
金属・半導体や無機化合物中には、高エネルギ-粒子線照射によってキャビティが導入されたり、あるいはその物質固有の構造キャビティが存在する。このようなキャビティによって機械的物質の変化、密度の減少、触媒性の発現等、興味深くかつ工業的にも重要な現象が起る。本研究では、キャビティに集まり易い陽電子をプロ-ブとして用いて、キャビティ内の性質、特に中に含まれるガス元素を調べようとした。 1.バナジウムボイド中のポジトルニウム 酸素および炭素不純物濃度を正誤したバナジウムを原子炉照射することにより,半径〜3mm,密度〜10^<16>1/cm^3のボイド(キャビティ)を含む試料を作製した。このような試料の角相関を測定し,ボイド内に入り込んだ陽電子の内でポジトロニウム(Ps)を形成する割合(Ps形成率)は酸素不純物量にはほぼ比例すること,従って,Ps形成率はボイド内表面の微量酸素偏析(一層以下)によること,炭素にはあまりよらないことを明らかにした。またPs形成率の焼鈍挙動を調べることにより,600℃までに酸素不純物偏析が,それ以上の温度では再固溶が起ることを見出した。さらにキャビティ内Psの重心運動の熱化,スピン交換反応も酸素不純物や測定温度によって敏感に変わることを見いだした。これらPsの挙動を利用することに依り,他の実験手段で得ることの出来ないキャビティ内部状態に関する有用な知見が得られることを示した。 2.ゼオライト・セピオライト中のキャビティ 合成ゼオライト(MS-3A,-4A,-5A,BX等)および天然セピオライト(単結晶ファイバ)中の構造キャビティ内に形成されるPsの状態,Psと酸素や窒素ガスとの間の相互作用を調べ,スピン交換,PsO_2形成等についての有用な知見を得た。 3.その他 炭素材料(グラファイト等)や重照射したニッケル,ステンレス等についても,キャビティについての有用な情報を得た。
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