非晶質合金の構造及び非晶質合金中に生成する結晶核の構造を原子尺度で明らかにするため、前年度に引き続きアトムプロ-ブ・フィ-ルドイオン顕微鏡を用いて観察・分析を行った。本年度は、前年度の二元系合金かっら進めて、主として三元系合金を調べ、二元系合金の結果と比較検討した。 用いた合金ではPdーSi二元系合金にCuを添加したPdーSiーCu合金であり、回転液中紡糸法により作成した。凝固状態の試料を電子線回折によって調べるとハロ-リングを示し非晶質状態であることを確認した。 アトムプロ-ブ・フィ-ルドイオン顕微鏡により単一原子単位で質量分析した結果、マクロ的には合金内部の組成は一様であったが、ミクロ的には濃度変調がみられた。25個の原子を一ブロックとしたときのブロック毎のSi濃度は8ー40at%Siにまで拡がっている。Si濃度変調の位置関係を知るために自己相関係数を求めると、相関長さのいかなる値についても有意にはなく、濃度変調の周期性は見られなかった。また、詳細な解析によると、Cu原子は2個ずつ塊まって存在する傾向をもち、しかもこれら2個は隣接するのではなく、間にPdまたはSi原子を1ー3個挟んだクラスタ-を形成していた。その結果、このようなクラスタ-がアモルファス相を安定化させている原因になっているのであると考えられる。 PdーSiーCu三元系合金の非晶質構造をPdーSi二元系合金の非晶質構造と比較すると、両者ともSiの濃度変調が存在するが、三元系合金の方が濃度の拡がり範囲が拡かった。また、二元系合金がSi濃度変調に周期性を持つのに対して、三元系合金では周期性がなくなった。
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