研究概要 |
本研究者らは,350〜723Kの温度範囲で高炭素鋼の恒温変態に関する研究を行った結果,等温マルテンサイト,ミッドリブ付下部ベイナイトなど数編の論文を発表したが,これらはいずれも静的な観察結果であった。鋼の恒温変態で最も感心の高い上部と下部ベイナイトの生成機構を実験的に明らかにすために,顕微鏡によるその場観察を動的に記録して議論す段階に来ている。 本研究では光学及び電子顕微鏡による動的観察を行い,種々の恒温変態生成物の生成過程を詳細に調べ,高炭素鋼の恒温度変態機構の全容を明らかにすることを目的としている。 本研究に購入した顕微鏡テレビカメラとテレビモニタを使用して高温光学顕微鏡にて、0.8〜1.8%炭素鋼の恒温変態を観察した。その結果,微細パーライト,上部ベイナイトおよび下部ベイナイトの恒温変態生成物が生成・成長する過程が動的に観察でき,それをビデオに収録することにより生成物の生成機構が明らかになりつつある。 現在までに本装置を用いて明らかにされたことは,1.8%炭素鋼の下部ベイナイトはマルテンサイトと同じく鉄原子は無拡散的にせん断変形により格子変形を行い,その後過飽和フェライト内の炭素原子が短距離拡散によりセメンタイトを形成するということである。今後他の炭素鋼についても同様の観察を行い,高炭素鋼全体にわたる恒温変異の動的観察から変態生成物の生成機構が論じられるものと期待される。
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