溶融インジウム系、タリウム系合金の活量などの熱力学的性質について知見を得ることは、非鉄金属精錬および電子材料製造の基礎として重要である。本年度は前年度のTl-Sb、Tl-Bi系合金の活量測定に引き続き、起電力法により溶融In-Biズ、n-Cu系合金の活量測定を実施し、次のような結果を得た。 (1)In-Bi系について、固体電解質、溶融塩電解質を用いた場合とも、900Kと1200Kにおける液体標準のインジウムおよびビスマスの活量はよい一致を示し、それぞれ全組成範囲にわたりリラウ-ル側より負に偏倚した。また、その温度依存性は高音ほどラウ-ル側に近づいた。 (2)In-Bi系、In-Sb系合金融体の両成分の活量をそれぞれ比較すると、In-Bi系に比べIn-Sb系の負偏倚の程度が大きい。これは固相における化合物の影響の差が合金融体になっても残存するためと考えられる。 (3)In-Cu系のインジウムの活量は1050K、1250Kの場合とも、銅の高組成側では負偏倚、インジウムの高組成側では正偏倚を示した。銅の活量は大部分の組成で負偏倚を示したが、インジウムの高組成側では極めてわずかなから正に偏倚した。また、両成分の活量とも温度上昇とともにラウ-ル則に近づいた。 (4)In-Cu、In-Ag、In-Au系の活量の挙動を検討した結果、典型金属であるインジウムとIB金属との合金融体の場合も、強い未充足のd結合が関与し、典型金属同志とは異なる結合様式を取り、IB金属は遷移金属的な性質を強く残しているというEngelの合金理論を支持できる結果が得られた。 (5)今後の研究計画はIn-Te、Tl-Te系などの合金融体について活量測定を行い、これらの合金系の性質を解明する一助とする。
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