本年度は電気伝導度測定と化学拡散係数の測定を行い同位体効果の確認を行った。まず、重水と空気の混合ガスにより、重水素分圧を制御し交流アドミッタンスの測定を行った。一定水蒸気分圧で電気伝導度の温度依存性を調べた結果、電導度は途中で温度係数の異なる折れ線を示し、低温度側でのみ同位体効果が認められた。次前に筆者らが報告した伝導機構からこれらの結果を解析したとこ、高温側では正孔伝導が、低温側ではプロトン伝導が優勢となっていることが認められた。また、プロトン伝導がほぼ100%とみなされる条件において、電導度を測定したところ、重水蒸気を用いた場合の電導度は水蒸気を用いた場合のほぼ1/√<2>となることが認められた。このことから、本電解質においては、プロトンは単イオンとして移動していることが明確となり、同位体分離隔膜としての応用の可能性が確認された。次に、水および重水の溶解度および溶解の化学拡散係数をSieverts法によって測定した。溶解度および化学拡散係数とも同位体効果は認められなかった。化学拡散係数に同位体効果が認められなかったのは、拡散が酸素空孔とプロトンのペア拡散であり、空孔の拡散係数および濃度の影響により、同位体効果が減殺された為と考えられる。このようにして溶解させた試料を真空中でアニールして放出されるガス種を質量分析機で調べたが、すべて水蒸気とそのフラグメントイオンであり、電解質中の水素の出入りは水の形で行なわれることが明らかとなった。これらの結果は63年度秋の固体イオニクス討論会および金属学会で報告を行ったが、得られた結果は鳥取大学の内田らの結果と良く一致していることが明らかとなった。
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