高温の液体金属中に吹込まれたガスからの気泡の分散挙動は、重要であるにもかかわらず、ほとんど測定されていない。一方、常温の水や水銀浴中での測定は多くあり、その結果より高温の液体金属中の分散挙動を類進しようとしているのが現状である。本研究では、修正フル-ド数と容器形状を一定とし、水、水銀、溶銅、溶鉄の各浴内での基本分散挙動を比較検討した。測定方法は、0.5mmφの黒鉛棒を用いた電気探針法である。測定項目は、気泡通過頻度、ガスホ-ルドアップ、上昇速度であり、それらを組合わせることにより、気泡分散相の広がり、浴内各深さにおける通過ガス流量、および、平均気泡径の浴内分布を評価した。気泡通過頻度の半径方向分布は2次元ガウス分布に従い、その標準偏差の2倍で気泡分散相の広がりを定義した。それは、水、水銀、溶銅および溶鉄浴の順に広かった。また、前2者では、ガス流量の依存性が見られなかったが、後2者では、ガス流量が増すにつれ、気泡分散相は狭くなった。気泡上昇速度も、水、水銀、溶銅および溶鉄浴の順に大きくなった。ガスホ-ルドアップと上昇速度から求まる各浴深さにおける通過ガス流量を吹込みガス流量と比較したところ、水浴では両者は一致し、水銀浴では、浴の静水圧を考慮すれば一致したが、溶銅および溶鉄浴では一致しなかった。また、この比較の結果から、溶銅および溶鉄浴では、ガスの熱膨張が浴深さ100mmまでは完了していないことがわかった。平均気泡径は、上昇速度と気泡通過時間の積で求まる気泡弦長さの平均値の1.5倍で評価した。各浴とも、浴が浅くなるにつれ、平均気泡径は小さくなり、気泡の分裂傾向が認められた。また、水、水銀、溶銅および溶鉄浴の順に大きくなった。気泡分散挙動は、溶銅と溶鉄浴中ではほぼ同じであったが、水と水銀浴中のそれとは大いに異なることがわかった。
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