浮揚金属液滴を用いる高温冶金反応をよりよく理解するためには、液滴表面温度の測定技術を開発しなければならない。その第一歩としてまず、浮揚液滴の表面温度を推定するため、Ni、TiやNbを含む高融点活性金属を浮揚溶解し、2色高温計を用いて液滴表面を観察した。その結果、いずれの金属も渦電流によるジュール熱で加熱される途上に於て、指示温度が一旦停滞し、その後再び急速に加熱される現象が認められた。表面状態を注意深く観察した結果、指示温度が停滞する時期は固体金属が融解し始め、数秒間で液体になり溶融金属が洋ナシ形状となって安定な浮揚状態に達する時期とほぼ一致していることを確認した。これらの結果を用いて液滴の表面温度を推定することができる。またこれらの浮揚液滴を急冷し、その重量変化を測定することにより、高融点活性金属の蒸発速度を求めた。これらり測定結果を用いてガス境膜物質移動係数を決定した。 一方、種種のPh_2をもつArーH_2気流中で浮揚銅液滴の脱酸実験を行い、脱酸速度に及ぼすガス流量及びPh_2の影響を検討した。その結果、脱酸速度は極めて速く、本研究で採用した酸素分析法の分析限界以下(1.5ppm)まで20秒以内で脱酸されることが認められた。脱酸速度がガス境膜及び液境膜物質移動抵抗によって律速されると仮定して、混合律速型の速度式を導出し、実験値に一致するように液境膜物質移動係数K_1を算出した。その結果、いずれの実験条件に於いても、K_1として0.01ないし0.05cm/sを得た。現時点では測温技術や分析技術が未熟であり、多くの問題点を残している。特にレーザー照射を行う場合にはその径が1mm以下の局所的な部分の測温方法を確立する必要があり、セルホックレンズとファイバーなどを用いる計測システムを開発することも一つの方向であろう。
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