浮揚金属液滴の高温冶金反応をよりよく理解するためには、液適表面温度の測定技術を開発しなければならない。その第一歩としてまず、浮揚液滴の表面温度を推定するため、Ni、Ti、ZrやNbを含む高融点活性金属を浮揚溶解し、2色高温計を用いて液滴表面を観察した。いずれの金属も加熱される途上に於て、指示温度が一旦停滞し、その後再び急速に加熱される現象が認められた。指示温度が停滞する時期は固体金属が融解し始め、数秒間で液体になり溶融金属が安定な浮揚状態に達する時期と一致していることを確認した。急冷試料の重量変化を測定することにより蒸発速度を求め、ガス境膜物質移動係数を決定した。これらのガス境膜物質移動係数をSteinberberーTreybal式を用いてレイノルズ数との関係を調べた。その結果パラメ-タnの値として0.85を得た。この値はRichardsonらがナフタリンの蒸発速度から求めたn=0.6と比較することは興味深い。一方、種々のp_<H2>をもつArーH_2気流中で浮揚銅液滴の脱酸実験を行い、脱酸速度に及ぼすガス流量及びp_<H2>の影響を検討した。混合律速型の速度式を導出し、k_1として0.08cm/sを得た。また同様にNiの脱酸実験も行いk_1として0.95cm/sを得た。高温での拡散係数の温度依存性が不明であるので両者を単純に比較することは難しいが浸透説から判断して両者に矛盾はないと考えられる。また液滴の振動数を測定することによりNi液滴の表面張力の酸素濃度依存性を得ることができた。現時点では光学系の設計、測温技術や分析技術が未熟であり、レ-ザ-照射による精製操作に多くの問題点を残しておりこれまでに得られた精製挙動とそのような条件下で得られるであろう精製挙動とを直接比較できる段階にまで達していない。特にレ-ザ-照射を行う場合にはその径が1mm以下の局所的な部分の測温方法を確立する必要があり、セルフォックレンズとファイバ-などを用いる計測システムを開発することも一つの方向であろう。
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