研究概要 |
近年、エレクトロニクスをはじめとする先端技術に於て、材料の超高純度性が要求されるようになり、従来の原理とは異なる精製技術が導入されているが、その精製機構が理論的に十分理解されているとは云い難い現状にある。本研究では、電子線やレ-ザ-照射技術を駆使して行われる高融点溶融活性金属の精製過程の物理化学現象を理解することを最終目的として、速度論的観点からそれらの研究に必要となる基礎的知見を蓄積することにした。まずインジェクション冶金において粗金属が製造され、種々のビ-ム技術を用いて精製が行われる過程を浮揚金属液滴でモデル化した。液滴にカルシウム蒸気を接触させ、その脱酸過程を速度論的に検討すると共にCO_2レ-ザ-を照射するプロセスを念頭においてAr-H_2混合ガス気流中に浮揚する液滴の脱酸速度を検討した。 浮揚金属液滴の高温冶金反応をよりよく理解するためには、表面温度測定技術を開発しなければならない。その第一歩としてNi,TiやNbを含む高融点活性金属を浮揚溶解し、2色高温計を用いて液滴表面を観察した。いずれの金属も加熱される途上に於て、指示温度が一旦停滞し、その後再び急速に加熱される現象が認められた。指示温度が停滞する時期は固体金属が融解し始め、数秒間で液体になり溶融金属が安定な浮揚状態に達する時期と一致していることを確認した。急冷試料の重量変化を測定することにより、蒸発速度を求め、ガス境膜物質移動係数を決定した。一方、種々のP_<H2>をもつAr-H_2気流中で浮揚銅液滴の脱酸実験を行い、脱酸速度に及ぼすガス流量及びP_<H2>の影響を検討した。混合律速型の速度式を導出し、K_1として0.08cm/sを得た。 現時点では光学系の設計、測温技術や分析技術が未熟であり、レ-ザ-照射による精製反応操作に多くの問題点を残している。特にレ-ザ-照射を行う場合にはその径が1mm以下の局所的な部分の測温方法を確立する必要があり、セルフォックレンズとファイバ-などを用いる計測システムを開発することも一つの方向であろう。
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