本研究は、高温度における気相反応生成物の同定を赤外分光分析計(IR)により行い、反応の中間生成物の測定を行うこと、および実験前後での固体試料の重量変化より反応速度を測定することにより、反応機構を推定し、速度論的な研究を行うことを目的としている。 昨年度に引き続き、本研究で使用する装置の製作、および性能、安全性等に関する試験を行い、トリクロロシランを原料に用いたシリコン析出に関する実験研究を行った。この研究において、IRによる生成気体の同定により、原料ガスの水素還元による塩化水素の生成、および他のシリコン塩化物の生成が確認された。反応速度論的な解析については、重量分析により測定したシリコンの析出速度に温度依存性が見られ、2つの析出過程の異なると考えられる温度領域が明らかになった。また、析出速度は、原料濃度の1次に比例していることも観測された。 次に、IRによる観測によって、析出速度800℃付近では、ジクロロシラン発生の極大がみられた。これは、以下に示す反応過程を裏付けている。 SiHCl_3(g)+H_2(g)→SiH_2Cl_2(g)+HCl(g) SiH_2Cl_2(g)→SiCl_2(g)+H_2(g) SiCl_2(g)+H_2(g)→Si(s)+2HCl(g) 析出温度が900℃を越える高温度領域では、IRにより気相中に四塩化シリコンの発生が確認された。これより、トリクロロシランの熱分解による次の反応が起こっていると推察される。 4SiHCl_3(g)→Si(s)+3SiCl_4(g)+H_2(g) また、この温度領域では、気相中のジクロロシランが減少していることより、次の反応も起こっていると考えられる。 2SiH_2Cl_2(g)→Si(s)+SiCl_4(g)+2H_2(g) 以上が本年度の研究実績の概要である。
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