本研究において、高温度の析出反応解析のために赤外分光器(IR)を組み込んだホットウォ-ル型反応装置の作成を行い、水素気流中におけるトリクロロシランからのシリコンの析出反応の解析を行った。赤外分光器により気相化学種を同定すること、また、析出前後の固体試料の重量変化から反応速度を測定することにより反応機構を推定し、速度論的な研究を行った。これらの研究から、次のことが判明した。 (1)反応の温度依存性を調べた結果、析出過程の異なる温度領域が明らかになり、その境界温度は、およそ860℃である。860℃以下での反応の活性化エネルギ-は、62.1kcal/mol、860℃以上では、2.2kcal/molであった。 (2)赤外分光器による気相種の観測により、析出温度800℃付近で、ジクロロシラン発生の極大がみられた。これは、低温度では、次の反応過程が主な反応であることを示唆している。 SiHCl_3(g)+H_2(g)→SiH_2Cl_2(g)+HCl(g) SiH_2Cl_2(g)→SiCl_2(g)+H_2(g) SiCl_2(g)+H_2(g)→Si(s)+2HCl(g) 析出温度が900℃を越える高温度領域では、次第に四塩字シリコンが観測されるようになった。また、ジクロロシランは、次第に減少している。これは、高温度では次の反応が起こっていることを示唆している。 4SiHCl_3(g)→Si(s)+3SiCl_4(g)+H_2(g) 2SiH_2Cl_2(gィ→Si(s)+Sicl_4(g)を2H_2(g) (3)反応速度は、トリクロロシランの濃度の一次に依存している。 以上、研究成果の概要を述べたが、さらに反応機講に関する研究を引き続き行う予定である。
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