TiーNi形状記憶合金の加工性に及ぼす組成、熱処理条件及び試験温度の効果を引張試験により定量的に明らかにすると共に、これら試料の内部組織を透過電子顕微鏡により観察した。その結果、以下のことが明らかになった。 1)冷間加工材の破断伸びは、約20%であり、700K以下の温度での焼鈍によってもほとんど変わらなかった。しかし、約800K以上の温度で焼鈍することによって破断伸びは著しく増大し、約70%にも達した。 2)Ni濃度が50.5at%以上の組成範囲では、時効により微細な析出物Ti3Ni4が形成されるか、これは延性を著しく劣化させる原因になる。このため、高Ni濃度の試料では時効析出物の形成されない温度域で熱処理する必要があり、この温度も約800K以上であった。 3)溶体化処理材について試験温度の効果を調べた結果、Ni濃度が50.0ー51.0at%の範囲内では、試験温度により延性は変化した。Ns点近傍で最大値約70%を示した。その結果、それよりも高温側では温度の上昇と共に伸びは減少し、Ns点より低温側では温度の低下と共に伸びが減少した。 4)組成依存性に関しては、溶体化処理材を3つの温度(室温、Ms点、473K)で変形して調べた。室温変形の結果は、Ni濃度の増加と共に延性は低下し、50.0at%Ni試料で70%であったものが、51.5at%Ni試料では、約10%になった。Ns点で変形した結果は少し異なり、50.0から51.0at%Niの組成範囲では、延性は組成依存性を示さず、いずれの組成も約70%近い伸びを示した。473Kでの変形では、いずれの組成でも低い伸びを示した。 5)透過電子顕微鏡観察により、加工性の悪い試料には多量の転位あるいは微細な析出物が内部組織として含まれている事が判った。 以上の結果に基づいて、TiーNi合金の加工条件が確立された。
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