本研究において3種類の新しい成果が得られた。第1に有限要素法と境界要素法による結合解法プログラムの開発である。有限要素法は小さい領域における弾塑性大変形解析に特長があり、境界要素法は大きい領域における弾性解析に特長がある。両者を結合した解析法のプログラムを研究の初段階で作成し、十分にチェックした後ポンチの押込み解析に応用し、試験片の大小による変形と力の状態に差が認められ、硬さ試験等の応用研究に有効であることを示した。第2として実験結果のデ-タ処理である。試験片の変形解析にあらかじめ円を試験片に印刷し(スクライブドサ-クル)、変形後にだ円となった円を解析するのであるが、この方法の有効性を生かし、非接触で多くの円のデ-タを取り込む新しい方法を提案した。すなわち1つの円を検出するには、円の中側を走査してゆがんだだ円の形状をデ-タとして取り込み、だ円近似した後ひずみを算出する。この方法はまた多数の円の位置を特定できるので、ひずみ分布図を描くことができる。さらに、従来実験に採用されていた全ひずみでなく、増分ひずみが測定できる見通しがついた。第3として、円筒ポンチ押込み実験によって相当塑性ひずみの等高線図を求めた。この結果ひずみの最大値は変形が進むとポンチの中心線ではなく、試験片との接触点に近い場所に生ずること、及びポンチと試験片の摩擦の有無は試験片表面に近いところの変形に影響するが、内部にはさほど影響してない傾向が得られた。以上の解析プロセスはブロックの変形のみならず薄板加工の面でも増分ひずみを測定でき、従来の全ひずみの測定をより詳しく解析できる手法を示した。
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