前年度に試作したピン・オン・プレ-トタイプのすべり摩擦試験装置を用い、ピン側の試料を鉄、ニッケル、チタンとする実験へと進んだ。しかし、これらの金属に対しては、アルミニウムや銅の場合と異なり、凝着を起こさせるような実験は試験機の容量不足で実現できず、かつ、この試験からは、実際の接合プロセスで重要なすべり距離に関しては何も情報は得られないことが判明し、研究の遂行上、問題が生じた。そこでディスク・オン・ディスクタイプのすべり摩擦による凝着試験を試みた。この試験では、すべり界面での凝着によって試験片は一般に接合するので、この接合強度を凝着強度として測定することで、凝着の難易が定量評価できないかと検討を行った。アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタンの5種類の金属を対象に、先ず、すべり距離や面圧の凝着強度に及ぼす影響を調べ、次に、同種を含む各種組合わせについて、それらの凝着性を調べた。そして、それらの結果を据込みによる冷間圧接性のデ-タと比較して検討するとともに、界面での凝着の様子をSEMおよびESPMAにより調べた。その結果、大変示唆に富む貴重な知見を得た。後者のすべり摩擦による凝着試験に関しては、その研究成果を平成2年度塑性加工春季講演会にて「相対すべりにおける金属の凝着とその評価」と題して発表すべく、一編の論文にまとめた。また、当該年度は最終年度に当たるため、本研究の成果を一冊の報告書としてまとめた。
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