本研究は波長3.5μm帯の次世代光通信用レーザ材料として期待される多元新固溶半導体(Pn_<1-X>CDx)(S_<1-Z>S_<PZ>)_<1+Y>をとり上げ、材料の物性を支配する組成X、Zおよびストイキオメトリーからの偏差yの同時制御法を提案し、所望の特性をもつ材料を再現性よく得ようとするものである。この同時制御は試料の熱処理を通じて行ったが、この際、2つのリザーバ、硫黄とセレンの混合体リザーバおよびCdSリザーバを設け、それぞれの温度を制御して、SとSeの蒸気圧と目的固溶体の端化合物CdSSeの活量、a_<cdsse>の制御を行った。その結果、所定の配合組成をもつ(SiSe)混合体リザーブ温度一定の下で、組成Xは活量a_<cdsse>の増加とともに単調に増加することが見出されており、a_<cdsse>〓0の時の組成X=0.10はa_<cdsse>=1において固溶限のX=0.185まで変化することが知られた。熱処理温度を種々変化させ、a_<cdsse>=1の下で固溶限(X)を求める検討も行ったが、その温度依存性も得られている。次に、組成Zの制御について検討した。熱処理温度を一定とし、(S、Se)混合体リザーバの配合組成を変化させると、配合比によって組成Zは単調に変化する。混合体の蒸気圧を硫黄とセレン独立に見積もり、組成Zとの関係を考察すると、組成Zはカルコゲンの分圧比(P_<52>/Pspz)に依存して変化することが知られた。この結果はカコゲン2種含む3元系固溶体において理論的に予測され、実験的に実証された結果と一致する。次に所望の組成X、Zの下でのストイキオメトリーからの偏差yの同時制御であるが、それぞれのX、Zに対応するようリザーバの活量a_<cdsse>と(S、Se)の配合組成を定め、混合体リザーバの温度を変化させることによって試みているが、現在、組成X、Zのある範囲で、ストイキオメトリーyが有効に制御できることが認められている。引続き、来年度詳細に検討し、圧力(Ps_2+Se)-温度(熱処理)-組成(所定のX、Zの下でのYの変化)図を作製することを目ざす。
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