最近、第二相が結晶粒界の大半を覆うように析出すると、変形抵抗が増加することがNi-Cr-W合金の1000℃のクリープにおいて実験的に証明され、この新しい強化機構は粒界析出強化として提案された。したがって、Ni基超合金の高温使用による強度低下を論じる場合、従来考えられてきた結晶粒内におけるγ(Ni_3Al)相の凝集粗大化のような均一な軟化だけではなく、結晶粒界に析出したγ相の変形抵抗に及ぼす効果、すなわち、γ相による粒界析出強化の効果を考える必要がある。 そこで本研究では、γ相の体積率が最大30%であるNimonic80Aを用いてγ相による粒界析出強化の存在を検討した。すなわち、この合金にまず、900〜1000℃で1000hまでの時効を行った結果、γ相の粒内析出密度が低く、粒界析出が優先的に生じ、また、粒界に占めるγ相の割合が大きな値を示す時効温度は1000℃であることが判明した。そこで、1000℃で最長3000hまでの時効を予め施し、結晶粒界におけるγ相の析出形態を制御した。これらの時効材の高温クリープ抵抗を評価するため、1000℃、5kgf/mm^2の一定応力クリープ試験を行った。一方、時効材については、光顕及び透過電顕による組織観察を行い、γ相の粒界及び粒内における析出形態を定性的に調べた。その結果、1000℃の時効において、γ相の結晶粒界に占める割合は100hで最高値を示し、100hを超えると低下して、3000h時効材においては50%以下にまで低下すること、また、粒内におけるγ相の析出密度は300hまではほとんど変化せず、300hを超えると急激に現象することが判明した。一方、各時効材について1000℃、5kgf/mm^2の一定応力クリープ試験を行った結果、最少クリープ速度は長時間時効材ほど大きくなっていた。すなわち、長時間時効材ほどクリープ抵抗は低下していることが判明した。
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