圧延に対して安定な(123)〔634〕方位を有する銅の単結晶99.5%まで冷延し、その圧延および再結晶集合組織の極点図を作成して立方体集合組織の成因について研究した。圧延集合組織の主成分は最高圧下率まで鮮鋭な(123)〔634〕方位であったが、圧下率95%以上では横方向に対して対称なバリアントが形成され、圧下率が増すにつれて発達した。また圧下率95%で分散の大きなrotated cube方位のdeformed matrixが形成され、圧下率が99%以上になると、それが(001)〔100〕方位に回転した。再結晶集合組織は、圧下率95%で立方体方位が現れ、圧下率の増加とともに発達した。副成分は圧延集合組織が残留したタイプであり、これが再結晶粒であることは、X線pin hole写真で確認した。即ちこれにより(1)圧延に対し安定な方位を有する単結晶においても高圧下率において(001)〔100〕方位のdeformed matrixが形成されること、(2)その形成と再結晶集合組織の立方体方位の発達との間に密接な関連のあることがわかった。以上の結果から、焼鈍の際に転位反応などによる原子集団のせん断的移動によって、圧延集合組織の分散の内に含まれていないような方位の核が生れるとする。例えば、回転再方位説のような考え方が実験的に否定された。(123)〔634〕方位のdeformed matrixに対し成長速度の大きな回転関係にある方位は8通り考えられるが、立方体方位以外の再結晶粒は成長しなかった。逆に圧延集合組織と同方位の再結晶粒が形成されたことは、安定方位のdeformed matrixの回復速度が速いことを示唆している。従って、立方体集合式の発達は(001)〔100〕方位のdeformed matrixがhigh blockであって、焼鈍の際に急速に核になることに起因すると結論んできる。アルミニウム単結晶についても、同様の結果を得た。(100)〔100〕方位のdeflormed matrixが如何に形成され、どうして核生成サイトになるかを解明することが今後の課題である。
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