本研究は、大気中および低気圧プラズマ溶射により、溶射条件としてプラズマ作動ガスの水素に注目し、Ti板の表面に導電性TiO_2、さらに添加物を加えたTiO_2複合酸化物皮膜電極を作成し、このような溶射皮膜の光電極特性と電極表面特性との関連を検討した。 1.溶射皮膜電極の光電流はプラズマ溶射雰囲気として減圧(100Torr、Ar)より大気、プラズマ作動ガス水素あり(10l/min)よりなしの方が大きくなるのが認められた。熱処理(400℃、90分)を行った溶射皮膜電極の光電流は水素ありとなしに拘らず、溶射のままより大きくなった。そしてTiO_2溶射粉末中にFe_2O_3酸化物の存在は溶射皮膜の光電流値を低下させ、Al_2O_3酸化物の存在は増加させるのが認められた。 2.TiO_2溶射粉末に各種金属酸化物を添加した混合粉末を用いて、大気中プラズマ溶射で作成したTiO_2複合酸化物溶射皮膜電極の光電流はプラズマ作動ガス水素ありの場合、TiO_2単独より増加し、金属のイオン半径に関係せず添加効果が大きいグル-プ(Cr_2O_3、Al_2O_3、ZrO_2及びLa_2O_3)と小さいグル-プに分類された。水素なしの場合は添加効果は認められず、逆にFe_2の添加によって光電流が減少するのが認められる。 3.各種TiO_2複合酸化物溶射皮膜を熱処理した場合、光電流は大幅に増加し、水素ありの場合、金属の酸化物の標準自由エネルギ-の減少と共に増加したのが認められ、水素なしの場合、光電流は金属の酸化物の標準自由エネルギ-に影響されず、ほぼ一定値を示すのが認められる。 4.プラズマ溶射で作成した各種溶射皮膜電極の光電流は電極表面のN_D(イオン化ドナ-密度濃度)の減少と共に、溶射条件及び熱処理に拘らず直線的に増加するのが認められる。ここで水素ありよりなしの方が、熱処理を行った場合が溶射のままの方よりN_D小さく、光電流が大きいのが認められる。
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