研究概要 |
生体内反応関連物質の定量分析では、局所的なサンプリング及び組織破壊の最小化のため、直径約8ミクロンのカ-ボンファイバ-(CF)電極が用いられている。その電極を用いて酵素反応の結果生成する過酸化水素を定量分析出来る方法を確立するよう、研究を進めてきた。一昨年度の研究では、CFの電気化学的基礎を追究し、定量的測定ばかりではなく解析的に解釈することが可能であることを示した。そこで本年度ではその応用として、ド-パミンの代謝物であって神経細胞付近に多く存在するDOPAC(3,4-dihydroxyphenylacetic acid)のCF上での電極反応挙動及び過酸化水素による金属錯体の接触反応挙動に焦点を当てた。燐酸緩衝溶液中で、CF・プラスチックカ-ボン(GRC)・グラッシ-カ-ボン(GC)電極を用いてDOPACのボルタモグラムを測定した。電気化学的前処理の影響をあまり受けないGRCを用いて、電極反応速度パラメタ及びDOPACの拡散計数を求めることが出来た。一方、CFでは顕著な電気化学的処理の影響を示した。強い処理をすると、拡散的なボルタモグラムが消失して、新たな吸着波が現れた。吸着量の濃度依存性から、langmuir型の吸着等温式に従うことが分かった。飽和吸着のときは、単分子吸着と考えられた。生体内に於てDNAの失活は銅フェナントロリン錯体と過酸化水素との接触反応によるが、この反応系の速度を電気化学的に測定した。銅フェナントロリン錯体のボルタモグラムはおもに拡散律速であるが、一部吸着を伴った。過酸化水素添加による接触波の解析から、GCにおける速度は4.4dm^3mol^<-1>s^<-1>であった。銅フェナントロリン錯体の吸着固定化を目指して焼結グラファイト電極を用いた。そのボルタモグラムの電位依存性から反応種は溶液中の錯体と異なることが分かり、その不均一速度定数は溶液内均一系速度定数より大きかった。
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