逆相液体クロマトグラフィの保持機構の解明において、各種固定相のクロマトグラフィ条件下での状態を観察することは最も重要なことである。本研究では、比較的大きなペロピレン型PAHを溶質として使用し、固定相-移動相-溶質間の分子形状認識能力の違いの原因を明らかにすることによって保持機構のより明確な理解を得ることを目的とした。 ファンクショナリティの異なるODS固定相を合成しPAHのクロマトグラフィ挙動と固定相構造との関連についてまず検討した。その結果固体NMRより明らかにされた固定相C-18アルキル鎖の動きの自由度をPAH分子の平面性認識能に相関性があり、自由度の小さなポリメリック70DSが最も分子の平面性を認識することがわかった。この認識能力は固定相の自由度が温度上昇に伴って増加すると、低下する傾向があることも明らかとなった。この結果を基に、より自由度の小さな固定相、あるいは逆に垂直型結合を有さない固定相の二つを設計した。前者は、平面性認識能力の高い固定相となるべきもので本研究ではジコロニレンを合成した。ジコロニレンはポリメリックODS以上の認識能を有することが確認できた。一方、後者としては、フェニル基をシリカゲル表面に平行に配位させる多足型固定相を合成し、その非平面性認識能力の高さを予測した。合成した3本足のトリス(ジメチルシリル)ベンゼン結合相はポリメツリックODSと正反対の保持能をPHAに対して示すことが確認できた。 以上の2年間の研究により、分子-分子相互作用をより詳細に検討することによりより選択性の高い固定相をデザインする道が拡けたと考えられる。
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