HPLC用高分子誘導体化試薬の開発に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63550566
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 田中 稔 大阪大学, 工学部, 助教授 (60029238)
• キーワード: 脂肪酸 / 誘導体化 / 高分子試薬 / HPLC

研究概要

1.昭和63年度に合成した3種類のHPLC用高分子誘導体化試薬の中でポリ〔2ー(1ーナフチル)エチルpースチレンスルホネ-ト〕を用いることにより、高級飽和脂肪酸を1.0×10^<-7>Mレベルまで定量できることが判った。しかし、低級飽和脂肪酸の誘導体化物のピ-クがブランクピ-クと重なるため、HPLCよりGCで定量する方が有利と考えられる。それゆえ、低級脂肪酸をペンタフルオロベンジル化し、電子捕獲検出器で高感度定量する目的で、ジビニルベンゼンとペンタフルオロベンジルpースチレンスルホネ-トを共重合させ、溶媒に不溶の高分子誘導体化試薬を合成した。この試薬をアセトン中に懸濁させ、KFまたはK_2CO_3/18ークラウンー6存在下でC_4ーC_3飽和脂肪酸を誘導体化することにより、1.0×10^<-7>Mまで定量できた。
2.上記の不溶性ペンタフルオロベンジル化試薬は脂肪酸のみならず、Br^-、I^-、SCN^-、S^<2->の無機陰イオンをもアセトン水溶液中で容易にペンタフルオロベンジル化し、ppbレベルのこれら無機陰イオンを定量することができた。
3.昭和63年度に合成したHPLC用の高分子誘導体化試薬よりさらに高感度で反応性の高い試薬を開発するため、ラベル基として2ー(2,3ーナフタルイミノ)エチル基をとりあげた。高分子化への前段階としてトリフルオロメタンスルホネ-トとし、UVおよび蛍光検出器に対する感度と反応性を検討した。その結果、室温、10分間で定量的に反応し、蛍光検出器で1.0×10^<-8>Mまで定量できることが判った。これは63年度に合成した上記の試薬より定量範囲が1桁低く、非常に優れたラベル基である。このラベル基を有する高分子試薬の合成には残念ながら至らなかったが、適当な置換基を導入し、さらに高感度で反応性の高い高分子試薬を開発したい。

研究成果

• [文献書誌] YASAKA,Yuta: "Polystyrenesulfonates as Polymeric Derivatizing Reagents for Fatty Acids in Liquid Chromatography" Analytical Sciences. 5. 611-612 (1989)
• [文献書誌] TANAKA,Minoru: "Poly〔2ー(1ーnaphthyl)ethylーpーstyrenesulfonate〕as Polymeric Derivatizing Reagent for Liquid Chromatography of Fatty Acids" Fresenius Zeitschrift fur Analytische Chemie. 335. 311-312 (1989)
• [文献書誌] TANAKA,Minoru: "Polymeric Pentafluorobenzylating Reagent for Gas Chromatography of Carboxylic Acids" Fresenius Zeitschrift fur Analytische Chemie. (1990)
• [文献書誌] YASAKA,Yuta: "Polymeric Pentafluorobenzylating Reagent for Gas Chromatography of Inorganic Anions" Chemistry Express. 4. 701-704 (1989)
• [文献書誌] YASAKA,Yuta: "2ー(2,3ーNaphthalimino)ethyl Trifluoromethanesulfonate as a Highly Reactive Ultraviolet and Fluorescent Labeling Agent for Liquid Chromatographic Determination of Carboxylic Acids" Journal of Chromatography.