本研究は高温型燃料電池の電解質タイル部分の品質向上を目的とし、3年間で研究を遂行するもので、今年度は初年度として電解質タイルの担体物質の合成条件および電解質タイルの作製プロセスを検討した。 1.電解質担体物質の合成 高温型燃料電池は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の混合溶融炭酸塩を電解質として約650℃で作動させるため、電解質の担体としては多量の溶融炭酸塩を保持出来、しかもアルカリ炭酸塩に対する耐食性が要求される。このため、本研究では従来から注目されているアルミン酸リチウムを担体物質とし、新しくチタン酸リチウムおよびジルコン酸リチウムについても、担体物質としての合成条件の検討を開始した。 この結果、アルミン酸リチウムの合成条件としてはγ-アルミナおよび水酸化リチウムを出発原料とし、700℃-2時間で合成したものが、炭酸塩の保持力に優れていた。高温で合成したものは、粒成長の影響が大きく、炭酸塩の保持力が低下した。また、合成したチタン酸リチウムやジルコン酸リチウムは、いずれもアルミン酸リチウムに比べて、炭酸塩の保持力が小さかった。さらに新しい合成条件の検討が必要である。 2.電解質タイルの作製プロセスの検討 電解質タイルの製造プロセスとして、(a)混合法、(b)含浸法、(c)部分混合法によって種々の条件下で電解質タイルを作製し、気孔率、微構造、硬度、燃料電池の作動温度における形状変化などについて調べた。 この結果、担体物質に加える混合炭酸塩の一部、すなむち15〜30wt%の炭酸リチウムを除いて、予め混合法で多孔質焼結体を作り、これに除いた分を含浸させる部分混合法によって最も変形の少ないタイルが作製された。今後は作製したタイルの性質や耐久性についての検討を行う。
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