アルミニウムイソプロポキシドとケイ酸メチルのイソプロピールアルコール溶液を加水分解して、ゲル状非晶物質を得た。イソプロピールアルコール混合溶液を水中に滴下して急激に加水分解した場合には、980℃付近で発熱反応を伴ってスピネル相が生成し、イソプロピルアルコール混合溶液に水分を滴下してゆっくり加水分解した場合には、発熱反応に伴ってムライトとスピネル相の二相が生成した。このスピネル相は1250℃付近で消滅し、ムライト単相となった。一方硝酸アルミニウムとケイ酸エチルのエタノール-水混合溶液を600℃に保持した電気炉中に噴霧して得た噴霧乾燥物では、980℃付近で非晶質からムライトが生成した。この噴霧乾燥物は850℃で一週間加熱しても非晶質のままであり、920℃で5日間保持したものは少量のムライトが生成した。これら両試料は加熱過程で同様に980℃付近で発熱を伴ってムライトを生成した。したがって噴霧乾燥物は非晶質からのムライト化の過程でスピネル相を経由しないことが示された。アルコキシド加水分解物と噴霧乾燥物のこのようなムライト化過程の相違は、非晶質中のアルミニウム成分とシリコン成分の分散の状態が異なっており、アルコキシド混合物ではアルミニウムイソプロポキシドの加水分解速度がケイ酸メチルよりも速いため、加水分解処理が激しいほど二成分の分離が大きくなり、アルミニウム濃縮部からスピネル相が生成するものと推定された。これら非晶質から低温で生成したムライトはa軸が大きく、アルミナ過剰組成であり、これは加熱温度の上昇に伴って化学量論組成へと変化した。出発組成が化学量論のものでは、1600℃以上に加熱するとムライトのa軸が再び増加する傾向が認められた。調整した非晶質物質の成形体は、結晶化に伴う発熱反応により急激に収縮し、発熱量の多い直接ムライト化する試料でその量が多いことがわかった。
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