アルミニウムイソプロポキシドをケイ酸メチルのイソプロピ-ルアルコ-ル溶液を、希アンモニア水溶液に滴下して加水分解し、Al_2O_3成分が60〜71.8wt%となるようなゲル状非晶質物質を得た。これらはいずれも980℃付近で発熱反応を伴ってスピネル相が生成し、さらに加熱すると1250℃付近でムライト相に変化した。調製粉末はムライトの化学量論組成Al_2O_3:71.8wt%)よりシリカの多い組成であるが、これをネライトとシリカに富む液相の共存する温度で焼成して、液相を利用した焼結によりち密な焼結体を得、さらにムライトとクリストバライトが共存する1500℃で再加熱処理を行って、ガラス相をクリストバライトに結晶化させた。焼結体のガラスの結晶化は時間とともに表面から内部へ進行していくことがわかった。再加熱処理した試料断面ののSEM観察より、結晶化が不十分な試料にはき裂が観察されたのに対し、結晶化が十分な試料にはき裂は観察されなかった。試料冷却中のAE測定の結果、このき裂は結晶化した領域と未結晶化領域との間の膨張収縮のミスマッチが大きくなる温度で発生した。また、結晶化の十分な試料では、構成相であるムライトとクリストバライトとの間の膨張収縮のミスマッチにより熱応力が発生していることが、格子定数の測定よりわかった。ムライト-クリストバライト複合体セラミックスの機械的性質を、常温での曲げ強さならびにKicで評価した結果、結晶化処理のガラス相を含んだムライト焼結体よりも、結晶化後はいずれの値も向上した。これは、前述の熱応力の作用によるものと推定された。
|