ムライト化学量論組成のアルミニウムインプロポキシドとケイ酸メチルのイソプロピ-アルコ-ル溶液を加水分解して、ゲル状非晶質物質を得た。この加水分解を速くすると、980℃付近での結晶化ではスピネル相が生成し、加水分解速度をゆっくりするとムライトとスピネル相の二相が生成した。このスピネル相は1250℃付近で消滅し、ムライト単相となった。一方硝酸アルミニウムとケイ酸メチルのエタノ-ル-水混合溶液を600℃に保持した電気炉中に噴霧して得た乾燥物では、980℃付近で非晶質から直接ムライトが生成した。この試料は980℃以下の920℃で長時間加熱してもムライトが生成するだけで、スピネル相を経由しないことがわかった。この相違は、非晶質中のアルミニウム成分とシリコン成分の分散状態が異なっており、アルコキシド加水分解物ではアルミニウムイソプロポキシドの加水分解速度がケイ酸メチルよりも速く、加水分解処理が激しいほど二成分の分離が大きくなり、アルミニウム濃縮部からスピネル相が生成するものと推定され、噴霧乾燥物ではその分離が非常に少なかったものと考えられる。低温で生成したムライトはα軸が大きく、アルミナ過剰組成であり、これは加熱温度の上昇に伴って化学量論組成へと変化した。非晶質物質の成形体は、結晶化に伴う発熱反応により急激に収縮し、発熱量の多い、直接ムライト化する試料ほどその収縮量が多くなった。ムライト化学量論組成よりもシリカ過剰の、ムライト-ガラス相の焼結体を作製して、その再加熱による結晶化過程を調べた結果、ガラス相からクリストバライトの結晶化は試験片表面から起り、結晶化の途中では冷却中に内部歪により大きな亀裂が発生すること、また結晶化を完了した場合には、焼成体の機械的性質が改善できることがわかった。
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