今年度は主に種々の複酸化物の単相粉の調製について研究を行ない、以下の事を明らかにした。 (1)所定濃度の塩化物を蒸留水:濃塩酸(12N)=1:1の溶媒中で均一に混合し、この溶液を過剰のアンモニア水中に迅速に投入することにより得られた共沈物は、いずれの陽イオン比率においてもX線的にはアモルファスである。 (2)これらの共沈物は、その後の熱処理によってそれぞれ目的とする複酸化物の微粉末になるが、合成温度は組成によって異なり、La_2O_3:TiO_2のモル比が1:2および2:9の組成の場合には700〜800℃の加熱により、また1:1の単相粉は1150℃、さらに2:3の化合物粉末は1:1と1:2との遂次反応により1120℃以上において合成される。 (3)本研究が対象としている2成分系では、さらにモル比が1:3および1:6の化合物相の存在が認められているが、本研究の粉末合成実験からこれらの相はいづれもある限られた温度範囲のみ存在する準安定相であることが確認された。 (4)特に、高周波用諸電体相として期待されている1:2および2:9の複酸化物について、本研究で得られた合成粉を用いて焼結体の製造を試みたところ、ともに添加剤なしで、単一相から成る高密度焼結体が得られた。そこで、さらにこれらの試料について2〜3の電気的性質を調べた。 来年度は、焼結挙動を詳細に検討するとともに、焼結条件や焼結体の微構造と誘電特性との関係についてて定量的に調べる予定である。
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