本研究いおいては、組成制御が容易であり、反応や焼結に対して高活性な微粉末の合成が可能な溶液からの共沈反応により調製した複コロイド粒子を用いて、マイクロ波誘電体材料として有望なLa_2O_3-TiO_2系複酸化物の単相粉末を調製し、さらにそれらの合成粉を制御された条件下で焼結することにより、組成と組織の制御された多成分誘導体を合成し物性制御の可能性について検討を行ったもので、以下に示す結果が得られた。 1.La_2O_3-TiO_2系の代表的な複酸化物であるLa_2Ti_2O_7(以下LT_2と略記する)と、La_4Ti_9O_<24>(L_2T_9)の単相粉の合成に必要な共沈前駆体を得るための最適共沈条件としては、pH>10の過剰のアンモニア水中で急速混合することが必要であることが確認され、この手法を用いることにより、種々の陽イオン比率を有する本2成分系化合物が容易に調整できることが明らかになった。また、800〜1000℃の温度領域で合成されたLT_2やL_2T_9粉末から、焼結助剤なしで緻密な焼結体が製造できた。 2.共沈物中に含まれる陽イオン種がどの様な形態で共沈するのか、また加熱によりどのような変化を経て目的とする複酸化物が生成してゆくのかを、赤外吸収やRaman分光法を用いて明確にすることを試みたところ、X線回折では、アモルファスパタ-ンから直接目的とするLT_2相やL_2T_9相が生成してくるが、X線的にアモルファスな状態において生じている一連の生成相の変化が分光学的な手法、特にRaman散乱により明らかにすることができた。 3.組成および微構造制御の例として、La_2Sn_2O_7-La_2Ti_2O_7系の複合誘電体を選び、本研究で確立された多成分系微粉末調整法をこの複合系に適用したところ、不均一さの原因となる粉末混合法を用いないで合成された複合粉体から、均一な組織を持つ複合誘電体が得られることが確認され、さらに詳細な誘電特性の測定により誘電率が複合体の組成に依存して直線的に変化すること、また容量の温度特性としては混合組成において小さくてかなり安定な温度係数を持つ誘電体となることが明らかとなった。
|