アルミナ繊維は融点が高く、高温強度、弾性率が大きいので高温断熱材料として用いられるほか、金属やプラスチックに入れて補強すると、高温強度の大きい複合材料となるためその用途が期待されている。しかし実際に上記の材料とするためには、性能のみならず製造コストが安いことが大切である。業界ではゾル-ゲル法に似た方法である程度実用域に達したとしているがまだ実用に供されているとはいえず、繊維製造に必要な基礎的研究がなお不足している。 筆者らはゾルーゲル法であるが出発原料にコストの安い無機塩化アルミニウムとアルミニウム粉末を用い、水を加えて加熱し透明なアルミニウムゾルを調製した。このゾルと市販の半透明及び乳白色アルミナゾルを用いて、電子顕微鏡によるゾル中粒子の形状の違いを観察した。その結果、透明ゾル中の粒子は細長く、半透明と乳白色ゾルのそれは円形か粒状であった。これらのゾルは60℃で加熱濃縮するとすべてゾルーゲル反応を起こしたが、円形粒子か粒を含むゾルはゲル化する前に曳糸性を示さず、長い形の粒子を含むゾルのみ曳糸性を示し、繊維の紡糸も可能であることがわかった。また回転粘度計でゾルの粘度とずり速度の関係を測定した結果、紡糸可能なゾルは紡糸時も粘性流動を示したが、紡糸ができないゾルはチクソトロピーを伴う構造粘性を示すことがわかった。 次に上記の紡糸可能な透明アルミナゾルについて、紡糸時におけるゾルの流動的性質に及ぼすゾル中の塩素イオン及びアルミナ濃度の影響を調べた。アルミナ濃度が2.4mol/dn^3と一定の時、塩素イオン濃度が0.7mol/dn^3以下になると粘性流動からチクソトロピーを伴った大きい構造粘性に変わること及び塩素イオン濃度が2.0mol/dn^3で一定の時、アルミナ濃度が3.0mol/dn^3と大きくなると弱い構造粘性を示すことがわかった。またこれらの結果はゾル粒子の形状と密接な関係があることがわかった。
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