アルミナ成分にアルカリを添加したNa_2OーAl_2O_3系ゾルからゲル繊維を紡糸し、これを加熱することによりイオン伝導性βーAl_2O_3繊維を作製した。出発原料としてAl(NO)_3・99 H_2O、NaNO_3およびAl金属粉末を使用した。これらの混合粉末に水を加えて懸濁液とし、撹拌しながら還流下で約20時間加熱した後濾過すると透明なゾルが得られる。Al4molのうち3molをAl粉末で用いるとゾルが不透明になるが、水の代りに1NHNO_3水溶液を使用すると、NaNO_3の添加量に関係なく、連続繊維の紡糸が可能なゾルが得られることがわかった。NaNO_3の添加量を変えて計算組成がNa_2O・11Al_2O_3、Na_2O・8.8Al_2O_<>、Na_20.73Al_2O_3およびNa_2O・5.5Al_2O _3の粘性ゾルを作製し、これより約5ー200μmからなる長さ約1mのゲル繊維を紡糸した。熱分析を行なった結果、Na_2Oの多い繊維ほどβーAl_2 O_3の結晶化温度が低くなり、ピ-クも大きくなることおよび加熱中のNa_2O蒸発量をNa_2O・7.3Al_2O_3組成のゲル繊維を用いて調べた結果、950℃付近から蒸発速度が大きくなることがわかった。従ってNa_2O・11Al_2O_3 (βーAl_2O_3理論組成)よりNa_2Oの多いNa_2O・8.8Al_2O_3およびNa_2O・5.5Al_2O_3組成の繊維を用い、1000℃で前者は20分、後者は10時間加熱する。 (βーAl_2O_3よりさきに析出するmーAl_2O_3をβーAl_2O_3に変えるために長時間かかる)とβーAl_2O_3結晶のみからなる繊維が得られることがわかった。後者の繊維の電気伝導度を交流法 (1KHz)で測定した結果、20℃で2×10 ^<ー3>S・cm ^<ー1>、300℃では室温の約1000倍になった。走査型電顕でこの繊維の微細構造を観察した結果、0.2μmのβーAl_2O_3結晶粒子からなることがわかった。 以上のようにゾル-ゲル法を用いると繊維化が困難なβーAl_2O_3繊維を低温合成できるので、繊維を織布や束場に出来れば、耐熱性でフレキシブルなイオン伝導性材料としての利用が期待出来る。
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