1.インタカレーション反応を利用したリチウム二次電池の正極材料として、層状の結晶構造をもつ二硫化チタンTiS_2が重要である。六方晶である二硫化チタンの薄膜を正極に用いる場合、TiS_2六角板状晶の配向性が電池特性に影響を与えると考えられる。本研究ではプラズマCVD法によりTiS_2薄膜を合成し、膜厚や結晶析出速度の違いによる結晶配向性の変化について調べた。さらに配向性の異なる薄膜を正極に用いた電池をつくり、放電特性を比較した。 2.ほぼ一定(3.1〜4.1×10^<-3>g/cm^2・h)の結晶析出速度で生成した薄膜の場合、膜厚が異なると、X線回折図に明確な違いが見られた。膜厚2.3μmのときには、001回折線が強くあらわれているのに対し、膜厚13.5μmでは001回折線が観察されず110回折線が強くあらわれている。このことは膜が薄いときにはTiS_2板状晶が基板に対して平行に配向し、膜厚が厚くなると板状晶が基板に対して垂直に配向することを示している。 3.反応ガスの流速を変化させて合成したところ、膜厚がほぼ一定(1.6〜2.4μm)の場合、析出速度が速くなるほど(001)面配向が弱くなった。さらに析出速度が速いと粉体を生成しやすくなった。 4.ステンレスなカーボンなど導電性のある基板上にも上記と同様に優先配向を制御してTiS_2薄膜を膜付けできた。TiS_2板状晶が基板に対して平行に優先配向している膜に比べ、垂直に立った配向の膜の方が、放電容量および充放電容量ともに著しく秀れることが明らかになった。
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