常圧焼結窒化ケイ素セラミックスについては、Y_2O_3-Al_2O_3助剤系において、3種類の助剤組成の焼結体を作製し、従来と同様300℃、8.6MPa下での水熱腐食試験を行った。それらのICPによる液分析、腐食層断面のEPMA分析、表面のSEM観察結果より、助剤総量が多いほど減量が多く、耐食性は低下するが、SiO_2存在下でのAl_2O_3の添加が腐食を抑制していることが分った。また、サイアロン系においてもβ-サイアロン(Z=0.5、Y_2O_35wt%添加、Al/Si=0.09)>α-サイアロン(x=0.2、Al/Si=0.08)>α-サイアロン(x=0.5、Al/Si=0.23)の順に、Al/Si比が大きくなるほど、アルミノ・シリケート保護膜による耐食性の向上が認められた。この現象をさらに確認するために、助剤無添加HIP焼結の窒化ケイ素についても同様の検討を行った結果、この場合には、腐食層は形成せず、原料粉体表面に存在する極微量のシリカ成分が構成する粒界相が選択的に溶出するため、窒化ケイ素粒子の剥落による試片の細化現象が見られた。この結果は、粒子焼結法であるPLS、HP、HIP法では、その焼結体の耐食性は粒界相に大きく支配され、むしろAl_2O_3-SiO_2系のように、粒界相を構成する酸化物相の組成、量の積極的制御が有効であることを示している。また、粒子焼結法に対し、化学結合法であるRB法にHIP法を組合せた緻密焼結体の作製、あるいはガス圧燃焼焼結法等による窒化ケイ素焼結体の特性向上が示唆された。 水熱腐食による機械的性質への影響については、室温曲げ強度の測定により、窒化ケイ素では、腐食初期に急激に低下し、その後2〜10日腐食試料で一定値となる傾向を見い出した。また、水熱腐食後の窒化ケイ素については、大気中にて再加熱した結果、多孔質ではあるが基体の窒化ケイ素と良好な界面を有する酸化物表面が形成され、表面改質、接合界面へのこの現象の応用が可能である結果も得た。
|