1.アルミナ-水系サスペンションをスリップキャストして作成した成形体の焼結挙動を調べた。pH値および塩(NH_4Cl)濃度を変化させ、粒子の分散状態の異なるサスペンションを調製した。この系のサスペンションの等電点(ζ電位が0となるpH値)は9.2であり、このpH値で粒子の分散状態は最も悪くなった。ζ電位の絶対値が大きくなるほど、粒子の分散状態は良くなった。pH=2のサスペンションの塩濃度を増すとζ電位が小さくなり、分散性は低下した。粒子が良く分散したサスペンションから、密度が高く開気孔径の小さい成形体が得られた。サスペンションのζ電位の絶体値が小さくなると成形密度は低下したが、その程度は塩濃度を増した場合の方が大きい。このようにして作製した成形体をいろいろな温度で焼成した。同じ焼成条件で比較すると、成形密度が大きい成形体ほど大きな焼結密度を与えた。塩基性のサスペンションおよび塩濃度の大きいサスペンションから得られた成形体では、焼成中に粒子の成長に異方性がみられた。この原因として、NH_4イオンがアルミナ粒子の成長に影響を与えることが考えられる。以上の結果をセラミックスの製造に応用する目的で、高密度の焼結体を低温で得る方法を検討した。pH=2のサスペンションを20日間放置して得られた上澄みをスリップキャストした成形体を1150℃で加熱して、平均粒径0.41μmで相対密度99%の焼結体が得られた。 2.テープ成形で得られる成形体の構造に及ぼすスラリーの性質の影響を調べるため、アルミナー溶剤ー結合剤系スラリーのレオロジー的性質と成形体の構造の関係を調べた。ポリビニルブチラールは結合剤として働くばかりでなく、分散剤としての効果もあることが分かった。分散効果は結合剤の量と分子量に依存した。粉体粒子の分散性の良いスラリーから密度の高い成形体が得られた。
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