水を分散媒としたアルミナ-シリカおよびアルミナ-ジルコニア2成分系サスペンション中の粉体粒子の分散性に及ぼすpHおよび中性塩濃度の影響を調べ、泥しょう鋳込み成形により作製した成形体の性質との関係を明らかにした。サスペンションの性質として、ξ-電位、レオロジ-特性、凝集粒子径分布および沈降体積を、成形体の性質として、成形密度、開気孔径分布および成分分布の均一性を調べた。 1.アルミナ-シリカ2成分サスペンションでは主に分散媒のpHの影響を調べた。アルミナおよびシリカの等電点はそれぞれ9および約3である。分散媒のpHが8以上のときアルミナは凝集粒子を作り、シリカ粒子は分散しているので、成形体中での成分分布が不均一になった。pHが3〜8の間ではアルミナ-シリカ粒子間でヘテロ凝集が生じ、成形体中で成分の分離はあまり無いが、密度は低い。pHが2のとき、アルミナ粒子をシリカ粒子が被覆した複合粒子が形成され、複合粒子の分散性は良く、密度は高い、組成の均一な成形体が得られた。 2.アルミナ-ジルコニア2成分系サスペンションでは分散媒のpHと塩濃度の影響を調べた。ジルコニアの等電点は7.8であるので、ヘテロ凝集の確認はできなかった。pH値が小さいサスペンションから作製した成形体は2層に分離した。pH値が7以上のサスペンションから得られた成形体は外観上は均一であったが、密度が小さく、それぞれの成分の凝集粒子で構成されていた。pH=4.5のサスペンションの塩濃度を高くしていくと、成分分布の均一な成形体が得られたが、最適な塩濃度が存在し、それは粉体濃度に依存することが分かった。塩濃度を高くすると電気二重層が圧縮され粉体間に凝集力が働くが、適当な塩濃度のときジルコニア粒子がネットワ-ク構造を作り、アルミナ粒子の沈降を抑えることが分かった。
|