オプトエレクトロニクス技術等の発展に伴い、300μm程度以下の大きさのマイクロレンズの開発が望まれている。本研究の目的は、電圧印加イオン交換によって、ガラス基板内に任意の大きさと焦点距離をもつマイクロレンズを形成させる方法を調べることであり、以下の諸点を明らかにした。1.マイクロレンズの作製法 第1段階で、ソーダガラスと溶融硝酸銀を接触させ、電圧を印加してAg^+イオンをガラス中のNa^+イオンとイオン交換させながら、Ag^+イオンの半球状濃度分布帯を形成させた。第2段階では、その半球状分布帯を溶融硝酸ナトリウムと接触させ、電流を同方法に流すことによって、ガラス基板内でのAg^+イオン濃度分布帯の形を球状に変えることができた。2.理論的解析 上記のAg^+イオン濃度分布の形は、操作条件(電流値、電圧印加時間、温度)によって変化する。本研究では、電場の影響を考慮した拡散方程式を解くことによって、マイクロレンズに最適な放物線型の濃度分布(屈折率分布)を形成させるための操作条件を求めた。3.理論の実験的検証 例として、直径40μm程度のマイクロレンズを作製するための理論的操作条件(第1段階は583K、1.5A/m^2、83分;第2段階は613K、2A/m^2、120分)に従ってイオン交換を行い、良好な放物線型のAg^+イオン濃度分布になることを示した。なお、第2段階での電流密度を0および10.5A/m^2にした場合のAg^+イオン濃度分布の理論的予測は、それぞれガラス表面側および内部側に片寄り、実測結果とよい一致を示した。これらの結果に基づいて、任意の直径のマイクロレンズを作製するための操作条件を理論的に推定できることを明らかにした。以上の成果を1988年上海国際ガラスシンポジウム(11月)(講演抄録P.71)および化学工学協会第54年会(1989年4月)で発表し、またJ.Non-Crystalline Solidsに投稿中である。
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