1.無機マトリックスに固定化した銅ビリジン錯体の局所構造と触媒特性: ビリジン官能基をもった化学種で修飾したシリカ表面及びゼオライト細孔内に、Cu(Py)_n^<++>錯体(n=3-4)が固定されることおよびその構造を分光学的に明かにした。また、固定化されたCu(Py)_l^<++>錯体中のCu^<++>は、酸素を配位子とするそれに比べて容易に酸化・還元を受け、シリカ上のそれは酸素分子と2:1の酸素錯体を、またゼオライト細孔内のそれは構造的制約を受けた1:1錯体が生成することを見いだした。これらの試料を触媒としてフェノールの二量化あるいは重合反応を行い均一錯体での結果と比べた所、触媒活性、選択性ともにそれぞれの試料で異なっており、Cu(Py)_4^<++>錯体の置かれている場がそれらに重要な効果を与える事を明かした。 2.MoO_3/SiO_2触媒上のモリブデン種の触媒特性におよぼすシリカ担体の効果: 担持モリブデン触媒は担体として用いられる無機マトリックスによって、その触媒特性が大きく異なることが知られている。シリカ上に担持されたモリブデンは一酸化炭素共存下での紫外光照射によりゼロ価に還元されることを見いだした。このゼロ価モリブデンは試料上のシリカの構造を反映した四配位構造の酸化モリブデン種に由来するものであることも明らかにした。 一方、MoO_3/SiO_2を水あるいは水蒸気で処理すると個体酸性を示すことを見いだし、その酸点が担体であるシリカを酸化モリブデン構造にとりこんだ12モリブドヘケイ酸であることを分光学的、およびブテンの異性化反応あるいはイソプロパノールの脱水反応の触媒反応によって確かめた。このことはMoO_3/SiO_2が水蒸気を含む工業触媒反応に多く用いられることから重要と思われる。これらの結果、モリブデン活性種が担体のシリカによって大きく影響をうけることを明瞭にしたものである。
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