種々の多元系ポリハライドイオンの電解生成法を開発し、これを酸化力が精密に制御された酸化剤あるいはハロゲン化剤として有機化合物の反応に応用することの可能性の実証を主目的として、Br-Clの2元系を用いて研究を実施し下記の成果を得た。 1.Br^-とCl^-を種々の比率〔Br^-/Cl^<-〕>で含む二塩化メチレン溶液の陽極ボルタンメトリーにおいてBr_xCl〔^-〕の生成を示唆する電位-電流挙動が観察された。Br_xCl〔^<-〕>の酸化力がxとy値によって制御されうるというのが本研究の立脚点であるので、この制御が〔Br^-/Cl^-〕値の制御によって実際に可能であることを次項以下の有機化合物の酸化反応で検証した。 2.アルコール類の酸化反応では〔Br^-/Cl^-〕値の減少に伴って生成ケトンの収率が増加したが、〔Br^-/Cl^-〕>0.2では微増であったのに対し0.2>〔Br^-/Cl^-〕【gtoreq.】0では急増した。このことはBr_xCly^-の酸化力を〔Br^-/Cl^-〕値によって制御できることの例証と認められる。 3.Br^-/Cl^-による脂肪族ケトンのα-ハロゲン化ではモノハロゲン化とジハロゲン化が同時に生起するが、両者の選択性は〔Br^-/Cl^-値により微妙に制御されることが実証された。すなわち、〔Br^-/Cl^-〕3ではモノハロゲン化が高選択率(90〜95%)で生起し、1>〔Br^1Cl^-〕>0.3ではむしろジハロゲン化が優勢となり0.3>Br^-/Cl^-〕【gtoreq.】0では両者とも低減化しハロゲン化反応自体の効率が低下した。 4.I-Br、I-Clなどの2元系のポリハライドイオンの生成もボルタンメトリーにおいて示唆されたので、これらについても上記のように有機化合物の酸化反応への適用をはかり、研究の拡充を目下進めている。さらに、3元系への拡張、実用的有機合成反応への応用などが中長期的研究計画の中心課題として考慮されている。
|