化学反応装置内で担体に保持された触媒が溶融して液膜状となり担体と強い相互作用を示しながら機能を発現する例は数多く見られる。このような液膜-担体の相互作用の機構を明らかにすることは、触媒設計の上からも重要であるが、触媒としての「機能」は、その表面に集約されていると考えられるため、触媒担体の表面を種々の方法で作成した酸化物薄膜で模擬することにより、液膜-担体の界面現象の理論的取り扱いが可能となる。本研究は、絶縁性の材料であっても導電性の基体の上に薄膜状にコーティングすることにより外部回路を通じて表面の電荷密度を制御あるいは計測できると考え、上述の担体を、高周波スパッタリング法で作成した酸化物薄膜で模擬し、電気化学的な手法によって薄膜上の電荷密度を制御しながら、触媒反応における液膜-担体(薄膜)の相互作用を解明することを目的とした。 検討の結果、液体と接した酸化物薄膜の導電性が液体側酸性度(pH)などによって変化し、界面領域の酸化物の性質がバルクの酸化物とは異なることが明らかとなった。そこで、試料と基準電極を組合せて起電力を測定し、液体の酸性度との関係を検討した。また、酸化物薄膜材料の帯電状態を界面動電現象測定から求めた。その結果、酸化物の種類によって同じ酸性度に対する帯電状態が異なること、起電力の測定結果と帯電状態との間には相関がみられることが明らかとなった。したがって、酸化物薄膜の基体と適当な基準電極との間に電圧を印加して表面電荷密度を変え、触媒反応を制御できると考えられる。 また、触媒担体上の液膜の成分である溶融塩のうち、組成に応じて酸性度が広範囲で変化する媒体である溶融ハロゲン化物の酸塩基特性について熱力学的考察を加え、反応媒体の物性評価法の確立を試みた。
|