水素吸蔵合金の水素吸蔵能を生かした合金上での脱水素反応について検討した。R_2Co_7、RFe_2(R:希土類元素)、Zr_2Niなどの水素吸蔵合金にアルコール(メタノール、エタノールまたは2-プロパノール)を接触させると、アルコールは効率良く脱離水素され脱水素はそのまま合金中に吸蔵されることがわかった。このタイプの脱水素反応では金属水素化物生成分だけエネルギー的に有利になるため、低温でも反応が進行するのが特徴である。 Nd_2Co_7による2-プロパノールの脱水素では、反応にともない2-プロパノール圧は減少し、それに対応して脱水素生成物であるアセトンが定量的に生成した。しかし水素ガスの生成はほとんど認められず、脱離した水素は気相に放出されることなくすべて合金中に金属水素化物として吸蔵された。すなわち反応は次のような量論式で表される。 Nd_2Co_7+n/2 CH_3CH(OH)CH_3 → Nd_2Co_7H_n+n/2 CH_3COCH_3 また脱水素速度は2-プロパノール圧にはほとんど依存せず、合金の水素化に伴う水素吸蔵脳の飽和とともに、低下した。さらに生成アセトンによる顕著な阻害の影響も認められた。メタノール、エタノールを用いたときも同様な脱水素挙動を示した。合金上でメタノールは一酸化炭素に、エタノールはアセトアルデヒドにそれぞれほぼ100%の選択性で脱水素され、水素はすべて合金中に吸蔵された。しかし、その反応性は著しく異なり2-プロパノール>エタノール>メタノールの順に減少した。一方、合金の脱水素活性はFe系よりCo、Ni系合金のほうが著しく高かった。また、合金はPt処理により反応性の向上することがわかった。これらの結果より反応の律速段階は合金表面に吸着したアルコールの脱水素過程であると結論した。
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